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2002年05月 アーカイブ

2002年05月04日

第6回

奇妙な春が始まって過ぎていった。梅につづいてこぶしの花が咲ききらないうちに桜が散り始め、
横では木蓮が下では連翹が気の早いツツジを急がしていた。
雪柳はすっかり薄緑になってしまっていた。
パンジーやチューリップは全開で家の愚息は、
近所の花壇の赤や黄色や紫の花の中に長い顔を入れて、
花の匂いを嗅ぎながらうんこをするという、変な癖がついてしまった。
去年の同じ頃にうちに来た時は、屋上のプランターのチューリップと同じ高さだったのに、
舞って落ちてくる桜の花びらを掌に受けようとすると、横取りしようと片耳を立てて指にパクついてくる。

それから蓼科か北八にトレッキングに連れ出そうと思っているうちに、梅雨が始まってしまった。
一日中雨の日は床から70センチの高さから始まる窓に顎を乗せて、
外を眺めてはプルプルルルルとため息を吐いて足踏みをする。
それからしょうがなさそうにくるくる回って、
大儀そうに足をたたんで気温が低いせいかすやすやと寝ている。
それを見ているとなんとなく小町の歌と共に、半夏生という言葉を思い出す。
何をするにも忌み、だから日柄一日何もしない。
正確には午前中だけれども。
昔は日出とともに生活が始まったから午前は、
今よりずっと長く夕方は宵で日中には入らないしから、日中の殆どだった。
それでも東京の梅雨は夜半に上がることが多く、公園の散歩に行けない日はめったにない。
それに芝生の上を走り回るのでそんなに汚れるわけでもない。

先日歩いていると急に立止まって動こうとしないので 何かと思ったら羽蟻がいた。
夜に何でと思うけれど動体視力は流石なものがある。
それから一頻り走り回ったあと、その羽蟻が体につくらしく気になって、走るのを止めてしまった。
皆が走ろうと誘いにきても"む・む・むし・虫がと・と・留った!
こ・こ・腰にいる"と意外と神経質な面を見せた。

このところ要領が相変わらず悪いのか、或いは高望みしているのか、
忙しかったのであまり本を読めなかった。
あれから読みあげたのは、
『数学 数学原論 嫌いな人の為の数学』
『水曜日の朝、
午前三時』
『中世奇人列伝』『真珠湾の日』
『ローマ人の物語Ⅹ』
『ジョン・ランプリールの辞書』『気象と自然の博物誌』
『村上春樹とアメリカ』
『凛冽の宙
』『アジヤの隼』
『風の国のナウシカ全巻』
『ルーシーの膝』
『数学 数学原論 嫌いな人の為の数学』は、
しばらく前から本の副題に"サルでもわかる"に始まって
"ネコ"と"ここがポイント"といった風の言葉が氾濫している。
受験の時ホント?と思って買ったそう言った意味では結局はあまり役に立たなかった、
やっぱりちゃんと勉強しなきゃね、と解かっただけの参考書の副題に似ている響きで、
なんだかね?と思う。

必要・充分条件や合成の誤謬と言う古いけれども今日的問題を、
月刊雑誌の特集企画の論考みたいにああも簡単に片付けられちゃうと、いいのかなって思ってしまう。
学生時代にエントロピーについて
よく物理的側面と数学的側面を混同して語られていたのを思い出してしまった。

映画も同じようにあまり見れなかった。
ヴィデオだけれども。だからかなりのタイムラグがある。
印象的だったのが『空の穴』。
やはり『リリィ・シュシュのすべて』は、貸出本数がそれでまでの作品に比べて少なかったので、
変だなと思っていたけれど、なるほどそうかもねと思った。


ところで、村上春樹の新作が出るらしい。
まゆりは楽しみにしていてアマゾンで予約してとうるさく言う。久しぶりの大作らしい。
ちなみに前回楽しみにしていると言ってた
『ジョン・ランプリールの辞書』は分厚くてその分読みごたえはあったが、つまらなかった。
『五輪の薔薇』などと同じようにT・ピンチョンのかっこよさや
『薔薇の名前』のような知識の重厚さには物足りなさを感じてしまった。

今年になって読みあげた本は
『装飾の神話学』
『われらをめぐる』
『リスボンの小さな死上・下』『桃源郷上・下』
『死んでいる』
『やがて中国の崩壊が始まる』
『日本の女優』
『中世奇人列伝』
『イブの7人の娘たち』。
次回おいおいお話しようと思う。

小島祐二


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