香港で11月22 日に、日本の時計コレクター界に特化した初のテーマオークション「TOKI -刻-: Watch Auction」(TOKIは日本語の刻)が開催される。そこでは、日本のコレクターが所有する世界的な時計メーカーの素晴らしいタイムピースや、日本の著名なブランド、独立系時計師による時計が出品される。オークションでは、歴史的に最も重要な時計市場のひとつである日本を包括的に紹介し、知識豊富な日本のコレクターが所有する卓越した時計や、時計製造の歴史において重要な節目を象徴する日本の時計師たちによる特別な作品が出品されます。オークションに先立ち、厳選されたハイライトが東京、シンガポール、台北、ジュネーブを巡回し、一般向けのプレビューが行われる予定です。
この初めの試みとなる企画オークションについて、フィリップスのアジア部門時計責任者のトーマス・ペラッツィと、フィリップス時計部門シニアコンサルタントの藤本和彦は共同で、次のように述べている。
「このテーマオークションを発表できることを非常に嬉しく思います。日本の時計界の多様性に触れることができるこの機会は、非常に貴重です。日本の時計コレクターは、世界的な収集トレンドに多大な影響を与えており、彼らのコレクションにある時計は、優れたメンテナンス、希少性、影響力により、オークション市場でも高い評価を得ています。このオークションは、世界中の時計愛好家にとって、最高基準の時計を手に入れるユニークな機会を提供します。また、日本の時計師たちは革新的なアプローチと高品質なタイムピースを製造する能力で知られています。特に、日本の時計製造史を包括的に理解できる日本ブランドの数々をご紹介できることに興奮しています。さらに、飛田直哉氏、浅岡肇氏、片山次朗氏、篠原那由他氏、菊野昌宏氏といった高名な日本の独立時計師たちによるユニークな作品を出品できることも光栄に思います。日本の時計市場に関する洞察を提供してくださったHODINKEE Japanのチームにも、心より感謝申し上げます」
日本の独立系時計師たち
過去10年で、日本における独立系スーパーコピー時計ブランドへの認知度は大幅に向上しました。独立時計師アカデミー(AHCI)に加入した菊野昌宏氏や浅岡肇氏は、その存在感を大きく高めました。近年では、日本でも新たな独立系時計師が次々と自身のブランドを立ち上げ、注目を集めています。
東京時計精密株式会社は浅岡肇により設立されました。
東京時計精密株式会社は2018年、浅岡肇氏により立ち上げられたクロノトウキョウの製造を行っています。現在では2012年に片山次朗により設立された大塚ローテックの製造もサポートしています。同時期に、飛田直哉氏がNH WATCH を創設しました。これらのブランドは比較的新しいにもかかわらず、コレクターや時計愛好家のあいだで大きな評価を得ており、その成功により近年、さらに新しい独立系ブランドが次々と登場しています。例えば、アンティークの懐中時計や腕時計の修理・販売で知られる中島正晴氏が設立したマサズパスタイムは、若手時計師の篠原那由他氏を筆頭に、自身の時計ラインの生産にも乗り出しました。こうした才能あふれる時計師たちが「TOKI -刻-: Watch Auction」のために特別に製作したユニークな作品の数々がオークションに出品されます。
以下記事中のエスティメート価格には、バイヤーズプレミアムは含まれていません。達成された価格にはハンマープライスとバイヤーズプレミアムが含まれます。
Naoya Hida & Co. 「Type 1D-2」
注目すべき出品時計のひとつに、Naoya Hida & Co.のType 1D-2 がオークションで初めて登場します。さらに、Naoya Hida& Co.は「TOKI -刻-: Watch Auction」のために、この時計の落札者に特別なユニーク彫刻サービスを提供します。落札者は、飛田直哉氏と彼のチームと共に、タイムピースにパーソナライズされたデザインを施す貴重な機会を得ることができます。
ユニークなイエローゴールド製腕時計
製造年:2024 年
落札予想価格: HK$280,000 - 480,000/US$35,000-60,000
菊野昌宏 「ユニーク・ピンクゴールド トゥールビヨン腕時計」
今回出品されるピンクゴードのトゥールビヨン腕時計には、菊野昌宏氏の価値観を象徴する意味深い物語が込められています。2011 年、同氏はシルバー製とピンクゴールド製の2 本のトゥールビヨン腕時計を手作業で精緻に製作しました。このムーブメントは、手作業で美しいヘリンボーン仕上げが施されています。2012 年のバーゼルワールドでプロトタイプとして展示されたこれらの時計は、すぐにあるコレクターの心を掴み、独立時計師としての菊野の活動を支援するため、シルバーのプロトタイプピースが購入されました。菊野氏は、二つの時計を一対として製作したため、ピンクゴールドのピースを販売しないと決めました。しかし、そのコレクターは将来の創作活動のために資金が必要だと菊野を説得し、最終的にピンクゴールドのピースが出品されることとなりました。このユニークピースは、菊野氏にとって特別なものであり、時計師と彼のビジョンを信じる顧客との深い絆を象徴しています。
製造年: 2011 年
落札予想価格: HK$200,000-400,000/US$25,000-50,000
マサズパスタイム「那由多モデル A」
マサズパスタイムでヴィンテージ時計を修復する日々の中で、篠原那由他氏は自分自身の創造性を取り入れた現代的な腕時計を構想していました。Nayuta Model という名前は彼の名前に由来し、仏教用語では「極めて大きな数量」を意味します。今回のオークションに出品されるこのモデルは、この「TOKI -刻-: Watch Auction」のために製作されたユニークピースです。シルバーダイヤルには、中央に繊細な花模様の彫刻が施されており、ブルースティールの針は篠原氏自身が手作りしたものです。完璧に仕上げられた自社製ムーブメントを眺めると、金色で手彫りされた「Nayuta A Toki 1/1」の刻印が目を引きます。この時計の細部のすべてが、若き時計師の非凡な才能を示しており、見る者を魅了します。
ユニーク・ステンレススチール腕時計
製造年: 2024 年
落札予想価格: HK$150,000 - 300,000/US$20,000-40,000
日本の独立系時計師たち:東京時計精密株式会社による能登チャリティ
2024 年1 月1 日、石川県能登半島でマグニチュード7.6 の地震が発生し、石川県輪島市で有名な伝統工芸「輪島塗」にも甚大な被害が及びました。これを受けて、東京時計精密株式会社は、存続の危機に瀕している輪島塗の復興に貢献すべく、オークションに出品される以下の3 つのユニークピースの売上全額を寄付することを決定しました。
大塚ローテック「№6 東雲-SHINONOME-」
東京・大塚のアトリエで独立時計師の片山次朗氏が手掛けるタイムピースは、レトロなアナログの魅力を醸し出しています。20 世紀中期の工業的美学に触発されたローテクノロジーな大塚ローテックは、小ロット生産を行い、片山氏が一から手作業で製作しています。もともとカーデザイナー・プロダクトデザイナーとして働いていた同氏は、オークションで旋盤を購入したことがきっかけで時計製造の道に入りました。今回出品される「№6」は、TOKI -刻-: Watch Auction のために特別に製作された一点物の作品で、東雲と名付けられています。これは夜明け前の空、太陽が昇り始める瞬間を指します。セミスケルトンダイヤルとブラック仕上げのステンレススティールケースが特徴で、そのミニマリスティックなデザインが非常に印象的です。独創的な技術と緻密な仕上げによって、このアナログのインスピレーションを受けたタイムピースは、20 世紀中期の美学を現代の洗練された枠組みで復活させています。現在、大塚ローテックは日本国内でしか入手できず、片山氏によるユニークピースを世界中のコレクターが手に入れるまたとない機会となっています。
ユニークピースのステンレススティール製、セミスケルトンダイヤル。製造年: 2024 年
落札予想価格: HK$ 15,000 - 45,000/US$2,000-4,000
タカノ「シャトーヌーベル・クロノメーター “TOKI”」
1899年に名古屋で創業したタカノは、当初は時計製造に特化していました。1957年から1962年の間に腕時計を製造していましたが、工場が伊勢湾台風で甚大な被害を受け、その後事業を終了しました。現在、タカノの商標はリコー株式会社が所有していますが、浅岡肇の東京都系精密株式会社は、ブランド名の使用に関するライセンス契約を結んでいます。現行モデルのシャトーヌーベル・クロノメーターは、薄型で非常に高精度を誇り、21 世紀に入ってからフランスのブザンソン天文台でクロノメーター認定を受けた最初の日本製時計としても注目されています。スティールケースは「ザラツ」技術を用いて鏡面仕上げされ、歪みのない美しい表面を実現しています。スタンダードモデルはブラックまたはホワイトダイヤルで提供されていますが、今回フィリップスウォッチは浅岡肇とのパートナーシップにより、ユニークピースとして「朱鷺色(ときいろ)」のダイヤルを製作しました。朱鷺色は日本の鳥「朱鷺」に由来する伝統的な色です。上昇する太陽を思わせる羽根を持つこの鳥は、日本文化において幸福と幸運の象徴です。この時計のオークションデビューにふさわしい色合いとなっています。
ユニークピースのステンレススティール製。製造年: 2024 年
落札予想価格: HK$50,000 - 100,000/US$6,400-13,000
クロノトウキョウ「グランド “虹”」
クロノトウキョウのグランドシリーズは、伝統的な日本の工芸技術である漆塗りダイヤルを用いた、驚異的な美しさを誇ります。この古代の漆技術は、日本の漆の木の樹液を濾過して利用するもので、固まる際に空気中の湿気を吸収し、永続的に光沢のある滑らかな表面を生み出します。時間が経つにつれて漆は硬化し、さらに傷がつきにくくなりますが、硬化プロセスは製作後も続き、経年変化によって漆が明るくなることもあります。また、環境によって漆ダイヤルの色が変化し、それ自体がユニークピースとなる可能性を持ち合わせています。今回出品されるグランド “虹”は、TOKI -刻-: Watch Auction のために製作された一点物です。これまでクロノトウキョウのタイムピースはステンレススティールで作られていましたが、この時計は18K ピンクゴールドで優雅に仕上げられています。ダイヤルは何層にも重ねられた虹色の漆で構成されており、これまでクロノトウキョウの漆ダイヤルを手掛けてきた島本恵未氏による作品です。
ユニークピースのピンクゴールド製。製造年: 2024 年
落札予想価格: HK$70,000-140,000/US$9,000-18,000
日本の主要時計ブランド
西洋に比べて比較的新しいものの、日本の時計製造は、セイコーの初の国産腕時計セイコー ローレルの発売から100 年以上の歴史を持っています。この重要なマイルストーンは、セイコー、カシオ、シチズン、グランドセイコーといった国内時計メーカーの発展の基礎を築きました。これらのブランドは、すでに確立された多くのブランドがひしめく時計業界の中で、独自の存在感を示し続けています。TOKI -刻-: Watch Auction では、フィリップスが日本の代表的なブランドによる最高の時計を厳選して出品します。
クレドール「叡智」
2008 年、セイコーは卓越した洗練を誇る時計であるクレドール 叡智)を発表しました。わずか25 本のみ製造され、シンプルなタイムオンリーの腕時計にパワーリザーブ表示を備え、完璧を追求した作品です。叡智のダイヤルはミニマルで、時刻とパワーリザーブのみが表示されます。白いノリタケ製の磁器ダイヤルは、セイコーの塩尻工場の雪景色を思わせる純白の美しさを放ちます。このキャンバスに、手描きのマーカーとテキストが控えめなコントラストを加え、青焼きの針がその美しさを引き立てます。特定の角度からは、2、4、7 の微かな数字が見えるのが特徴で、これはクレドールの「24 時間7 日間絶えることなく流れる時への思い」を暗示するユニークなデザインです。今回出品される叡智は、25 本限定のうちの一本で、非常に良好な状態で保存されており、付属品も全て揃っています。複雑な技術が極限まで研ぎ澄まされ、ミニマリズムの美しさが際立つこの作品は、時計製造技術の純粋な形を体現したマスターピースです。
プラチナ製。製造年: 2010 年。落札予想価格: HK$ 280,000 - 430,000/US$36,000-55,000
セイコー「天文台クロノメーター」
クォーツ危機以前の時代、天文台クロノメーターの試験は、時計製造界で非常に権威あるイベントでした。セイコーは1963年にヌーシャテル州立天文台のコンテストに初参加し、海洋クロノメーター部門でクォーツクリスタルクロノメーターを提出し、見事10位にランクインしました。この成果により、セイコーはスイス以外の企業として初めてトップ10入りを果たし、クロノメーターコンテストでの一連の勝利の始まりとなりました。その後の数年間、セイコーは非常に正確なムーブメントを製造する能力を示し続けました。1969年当時、天文台クロノメーターは、当時の基本的なグランドセイコーの約6倍の価格でした。オリジナルの裏蓋がソリッドである一方、今回出品されるこの腕時計にはムーブメントを鑑賞できる展示用の裏蓋が装備されています。さらに、この時計は2014 年6 月から8 月にかけてセイコーミュージアムに展示されたという点でも特筆すべきものです。
イエローゴールド製。製造年: 1970 年。落札予想価格: HK$160,000 - 310,000/US$20,000-40,000
Casio「G-Shock ドリームプロジェクトRef. G-D5000-9JR」
圧倒的な存在感を放つこのG-Shock ドリームプロジェクト G-D5000 は、2020 年にカシオの35 周年を記念して発表された、初のフルイエローゴールドG-Shockです。297gという重量を誇り、35本のみが製造されましたが、すべてのモデルは日本国内での抽選販売によりコレクターに提供されました。このモデルは非常に高い需要があり、発売直後に完売し、GShock史上最も希少なモデルのひとつとなっています。機能には、ワールドタイム、アラーム、ストップウォッチ、タイマーが含まれ、ソーラー駆動式です。さらに、この時計のパッケージングは日本文化を祝うもので、桐箱には「重力夢企画」と書かれた印が押されています。
ソーラー駆動、マルチ機能搭載、イエローゴールド製。製造年: 2021 年。落札予想価格: HK$200,000 - 400,000/US$25,000-50,000
日本のコレクターたちが所有する、世界的な時計メーカーによるタイムピース
注目の出品作のひとつに、プラチナ製のパテック フィリップ Ref. 5016 があります。この腕時計は、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久カレンダーを備えたカラトラバスタイルのケースに収められており、ジャン-ピエール・ハグマン氏が製作したケースにはムーンフェイズ表示も付いています。特に今回出品されるモデルは、これまで市場に登場した中で唯一知られている未公開のローマ数字インデックスが配されたグレーダイヤルであることが特徴です。
パテック フィリップ「Ref. 5016」
プラチナ製 ミニッツリピーター、永久カレンダー、トゥールビヨン搭載腕時計。製造年:1994 年
落札予想価格: HK$3,500,000 - 5,000,000/US$450,000-650,000
今回初めてオークションに出品されるロジャー・スミスのシリーズ2 は、非常に希少で優雅なホワイトゴールド製シリーズ2 エディション3 の4番目の作品で、世界で5 本しか製造されていません。伝説的なイギリスの時計師ジョージ・ダニエルズと長年にわたり共に働いたロジャー・スミス氏は、この38mm のケース内で二人の時計製造の技術を見事に表現しています。手彫りのプレート、フロステッド仕上げ、エンジンターン仕上げのソリッドシルバーダイヤルなどが特徴で、英国スタイルの伝統的な仕上げが施されたプレートやブリッジは、ダニエルズの後を継ぐスミスの技術力を象徴しています。この時計は、2013 年に日本のコレクターに納品されたことを証明する証書と、付属品一式が揃って出品されます。