最後の食事

最後の晩は注射をして熱が出たので公園には行きませんでした 

その代わりお父さんのアトリエで少し遊んでもらって3人で食事をしました

お父さんたちは僕のお皿に何もなくなってもとてもゆっくりご飯を食べるので

 テーブルの下でお母さんの足の上に顔を乗せてお母さんを見上げます

と時々目が合います 

するとすぐきちんとお座りをすると何かもらえます

その日はいつになく何回も一度口に含んで食べれるようにしてもらいました

誰もいなかったのでお母さんの脇に顔を入れてもっとと催促すると 笑いながら

お父さんの方を見ます

お父さんのところへ行って顔を差し出すとお父さんも顎を差し出して唇に

食べ物を出してくれます

それをうん〜っとそうっと前歯でとって食べます

こんどはお母さんがお父さんのことをずるいと言って 同じことをやってくれます

僕が本当にそうっと上手にできたのでお母さんとお父さんの間を何度も

行ったり来たりして いつもよりずうっと長い食事をしました

それからテーブルの周りで少し追いかけっこをしたり なでてもらったりしてるうちに

散歩から帰ってくる時間になってしまいました

僕はまだお家へ帰りたくなかったので ゴミ箱の中のお菓子の匂いのする袋をくわえて

お母さんのところへ行って 怒ってもらったりしました 

怒った顔をしたお母さんは 僕が袋をお母さんの声に合わせてぽとりと落とすと 

喜んでお父さんに言いつけました

僕は耳を立てて何回も袋をくわえては落としました

お母さんたちは何回も怒っては笑いました

僕はスキップでお父さんとお母さんに擦り寄ってお家へ帰りました

そしていつものように僕たちが寝静まる頃お姉ちゃんが 

僕を覗き込んだあと足の間を通り抜けて反対側のお父さんの横で寝ました

 

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