お父さんの指輪
お父さんが僕に指輪を作ってくれた
ふたりで天秤座のメリーゴーランドで遊んだとき 星の王子様の所で留守の王子様を待ちながらサッカーをした
王子様の星は僕たちにはとても小さかったので ボールは反対側から戻ってきたりして もうルールがめちゃくちゃですっごく楽しかった
お父さんに取られないようにのりのりで思い切り蹴ったボールは バオバブの垂れた枝をすり抜けて流れ星になって飛んでいっちゃっいました
であとで 王子様から手紙がきました
−先日はせっかく来てもらったのに残念でした パフが寂しがっていたものだから、、、、
それから僕たちの走り回った跡を見てとても嬉しかったこと そのひとつを水で固めて大事にしていること また流れ星にしてしまった金平糖を返してほしいと書いてありました
−ねぇ お父さんパフって誰? 知ってる?
−ああ ドラゴンだよ
−黙示録に出てくるあのドラゴン?
−ドラゴンはドラゴンだけど パフは違うよ
−ドラゴンは火噴いて毒ガス撒き散らして 怖いやつでしょう
セント・ジョージが退治したんだよね
− パフは違うってば 怖くないよ
それに黙示録のドラゴンは人間にとっての疫災の全てを言い表しているだけで、、、
たとえば火山の噴火とか ドラゴンは悪者にされてかわいそうだよ
−パフは怖くないの 星の王子様がお見舞いに行ったらしいよ
−パフは海のそばの洞窟に住んでいて独りぼっちで寂しいんだよ
−なんで独りぼっちなの
−むかし仲良く遊んでいた少年が来なくなっちやっだんだ それで悲しくなっていじけて洞窟に閉篭もっちゃったんだ
−その子はパフのことが嫌いになったの
−そうじゃないさ もういつの間にか来れなくなったんだよ
−ふぅ〜ん 王子様はなにをお土産に持っていったかなぁ〜
−さぁ〜 何だろうね?
と言うとお姉ちゃんの方へ寝返りをうちました
お姉ちゃんは僕のほうを見てひとつあくびをして尻尾を軽く振って またゴロゴロいいながら丸くなりました
最近僕がよくお父さんに話しかけるので お父さんは寝不足になって持病のメニエルが出てしまいました
それが季節外れだったので 涙が耳の中に溜まっていると言って先生に笑われました
次の日お父さんはパフの歌を口ずさみながら指輪を作り始めました
細長い楕円形の台の上で僕と星の王子様が金平糖でサッカーをしています
― ふたりだけだとあまり楽しくないね つまらないよね そうだ 寂しがり屋のパフと何でも言うことを聞いてくれるシェンロンを入れようっと
とお父さんはパフの曲に合わせて口ずさみました
僕は嬉しくなってお父さんの少し調子の外れた歌にあわせてオーガスタの葉を揺らしました
それから楕円の台の上に僕たちの位置を決めるとガスバーナーでロー付けをしました
僕は王子様と向かい合ってレフリーの笛を据わって待っています
― ゲクラン 3対1だから絶対勝てるぞ といいながら炎の先端をそれぞれに当てていきます
僕はだんだん温度が上がっていって黄金色からピンク色に輝いています
今度はパフが輝きだします 僕も一緒に炎をフゥーッと吹きます
― ゲクラン 熱いかぁ〜ごめんよぉ〜でもこのゲクランは骨にはならないんだよねぇ〜
といっそう調子が外れていきます
それからちゃんと台の上にくっいているかどうか確かめて 窓越しにいつも僕が日向ぼっこしていたところに目をやりました
僕はそこでいつもお父さんのほうを見ていました
目が合ってもう戻っても良いと言うと まだだよとピースサインで無視されたりしました
そのあと階段に座ってふたりで夕焼けを眺めました
つづく
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