お父さんはお布団に入ると、きょう届いた本を読み始めました。 でも、お父さんは声を出して読んでくれなかったので退屈になって、枕に顔を乗せてお父さんの耳をペロペロ舐めたり、本をかじったりしました。 それでもお父さんは興味を持ってくれなかったので、お母さんの方を向いて、寝てしまいました。 ぼくは丘の上に立って、風の来る方を見ていました。 風は海の向こうの陸から吹いてきます。風はいろんなぼくまだの知らない匂いを運んできてくれます。 なんだか暖かいような匂いがして下のほうを見ると、ヒツジさんたちの群れがのんびり草を食んでいました。 それからずっと遠くの岸辺に一人で佇んでいるヒツジさんがいたので、トコトコ近づいて行きました。 ―
こんにちは、ヒツジさんてお布団の匂いがするよ。 ― じゃあ、きみのうちの布団は、ぼくらの毛でできているんだね。そばに来て暖まってもいいよ。 ぼくはお尻のほうからクンクン匂いを嗅ぎはじめました。 ―
ねぇ、どうして。悲しそうに独りでここにいるの。 ― 実は、かわいそうな女の子の話はお父さんから聞いただろう。 ―
うん、でも、みぃ〜んなかわいそうだよね。 ― そのとき、すごいスピードで思い切り振り向いたので、片方の角も一緒に落ちてしまったんだ。 ―
お父さんはそんなこと言わなかったよ。それで角はどうなったの。 ―
海に沈んでいるうちに、うっかり者のイカさんが衝突して、体がスッポリ入っちゃって、オウム貝になってしまったんだ。 ―
ほ・ほんとうぉ!、すごいなぁ〜。 ― だからこうして、ずーっと数え切れないくらい昔からこうして返してくれるのを待っているんだ。 ―
うっかり者のイカさんは返しに来てくれないの。 ― ここには星がめぐる時間でしかも昼間しかいられないから、海の底から重い角を着て泳いでくるイカさんは、いつも間に合わないんだよ。 それから本当は、イアソンの金羊毛には片方の角がなかったこと、ぼくたちから見える方は角があるけど、 反対側には角がないので外側の星さんたちには、いつもからかわれて悔しいと話してくれました。 ―
だからイアソンは王様になれなかったの?。 ― 秘密だよ。と言いました。 それから
― もう行かなくちゃ。と言うと金色の光になって、ものすごいスピードで空を駆け昇って行きました。 第二夜へ Top |