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こらこら、危ない、触ると毒がピューっと出るぞ!。 ― うわぁ!っと、・・・っと。こんばんはサソリさん。カニさんより小さいね。 ―
カニぃ!奴ははさむだけじゃ。わしは刺すぞ。ぼくは小さな尾っぽをクンクンと嗅ぎました。 ―
ほら、危ないちゅうとろうが!。ものが触ると刺さずにはおれんのじゃ。 ―
なんかへんな匂い。 ― しっ・しつけいな!。この毒でオリオンを倒したんじゃぞ。 ―
ねぇ、ねぇ、サソリさんっていま歩いてんの、走ってんの?。 ―
つくづく失敬な奴じゃ、こんなに足を動かしとるんじゃ。 ― ねぇ、おそいね。 ―
ほっとけ!、親の顔が見たいとはこのことじゃ。 ― うぅ〜ん、お父さんとお母さんがよく言い合っている。 ―
そうか、おまえはよほど腕白小僧のようじゃな。 ― ねぇ、走りにくくない?。 ―
なぜじゃ。 ― そんなに尾っぽ上げたら転びそうだよ。 ―
それがじゃ、よぉ〜くお聞き、わしはハンターじゃ。 ― ぼくもハンターだよ、狼を狩っていたんだよ。お父さんは生き物はだめだって。その代わりボールやフリスビーを狩るんだよ。でも、ボーダーのハルちゃんに初めて会ったとき、ヤギに間違われて狩られた。それからハルちゃんたちボーダーがいるときは、ヒツジでもヤギでもありませんって言いながら、みんなと走るんだよ。 ―
わしは本物のハンターで、ぴかいちのコマンドじゃ。SASもわしを真似とる。 ―
お父さんの好きなキートン先生も?。 ― そうじゃ、尾っぽを高く上げるのは、いつなんどきも敵に最初の一撃を食らわせるように構えておる。それに前のめりになるから、少しでも前に進むようにじぁ。 ―
でも、なんだかほとんど転びそうだよ。で、何を狩っているの、ぼく・ぼくじゃないよね。 ―
オリオンじゃ、もしお前なら、もう死んどる。 ― ねぇ、あんなに遠いんだったら、尾っぽを下げて走ったほうが速くない?。 ―
未熟者!めが、ものに触ったら刺さずにはおれんと言うたろうが。オリオンまで毒がもたん!。 ―
ねぇ、もう西のお空に沈んじゃうよ。見えなくなっちやうよ。 ―
急げ、追いかけるんじゃ!。 ― あぁあ、最後のお星さんが沈んじゃった。見えなくなっちゃった。 ―
うむぅ・・・・。明日じゃ。 ― また明日もやるの?。 ―
そうじゃ、わしと共にオリオンが空に上げられた以上、サソリ族の矜持にかけてこの任務は、まっとうせねばならぬ!。 そう言うと、砂を掘り起こしてズン、ズンと体を沈めました。 ―
やっぱりカニさんに似てる。ふたつ右左に頭で繋がったら、ほとんどカニさんだよねぇ〜。むかしはカニさんだったのかなぁ〜。 とぼくが言うと、砂の中から尾っぽの先が潜望鏡のように出てきて、チッチッと言いました。 第九夜へ Top |