第八夜

さそり座 ― オリオンとの追いかけっこ

登場人物さそり、ぼく、ハルちゃん、マスター・キートン、オリオン


― こらこら、危ない、触ると毒がピューっと出るぞ!。

― うわぁ!っと、・・・っと。こんばんはサソリさん。カニさんより小さいね。

― カニぃ!奴ははさむだけじゃ。わしは刺すぞ。ぼくは小さな尾っぽをクンクンと嗅ぎました。

― ほら、危ないちゅうとろうが!。ものが触ると刺さずにはおれんのじゃ。

― なんかへんな匂い。

― しっ・しつけいな!。この毒でオリオンを倒したんじゃぞ。

― ねぇ、ねぇ、サソリさんっていま歩いてんの、走ってんの?。

― つくづく失敬な奴じゃ、こんなに足を動かしとるんじゃ。

― ねぇ、おそいね。

― ほっとけ!、親の顔が見たいとはこのことじゃ。

― うぅ〜ん、お父さんとお母さんがよく言い合っている。

― そうか、おまえはよほど腕白小僧のようじゃな。

― ねぇ、走りにくくない?。

― なぜじゃ。

― そんなに尾っぽ上げたら転びそうだよ。

― それがじゃ、よぉ〜くお聞き、わしはハンターじゃ。

― ぼくもハンターだよ、狼を狩っていたんだよ。お父さんは生き物はだめだって。その代わりボールやフリスビーを狩るんだよ。でも、ボーダーのハルちゃんに初めて会ったとき、ヤギに間違われて狩られた。それからハルちゃんたちボーダーがいるときは、ヒツジでもヤギでもありませんって言いながら、みんなと走るんだよ。

― わしは本物のハンターで、ぴかいちのコマンドじゃ。SASもわしを真似とる。

― お父さんの好きなキートン先生も?。

― そうじゃ、尾っぽを高く上げるのは、いつなんどきも敵に最初の一撃を食らわせるように構えておる。それに前のめりになるから、少しでも前に進むようにじぁ。

― でも、なんだかほとんど転びそうだよ。で、何を狩っているの、ぼく・ぼくじゃないよね。

― オリオンじゃ、もしお前なら、もう死んどる。

― ねぇ、あんなに遠いんだったら、尾っぽを下げて走ったほうが速くない?。

― 未熟者!めが、ものに触ったら刺さずにはおれんと言うたろうが。オリオンまで毒がもたん!。

― ねぇ、もう西のお空に沈んじゃうよ。見えなくなっちやうよ。

― 急げ、追いかけるんじゃ!。

― あぁあ、最後のお星さんが沈んじゃった。見えなくなっちゃった。

― うむぅ・・・・。明日じゃ。

― また明日もやるの?。

― そうじゃ、わしと共にオリオンが空に上げられた以上、サソリ族の矜持にかけてこの任務は、まっとうせねばならぬ!。

そう言うと、砂を掘り起こしてズン、ズンと体を沈めました。

― やっぱりカニさんに似てる。ふたつ右左に頭で繋がったら、ほとんどカニさんだよねぇ〜。むかしはカニさんだったのかなぁ〜。

とぼくが言うと、砂の中から尾っぽの先が潜望鏡のように出てきて、チッチッと言いました。

 

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