十二夜物語  ゲクラン ゾデアックを旅する ― 夢の中 ―

登場人物―用賀の人々、ぼくゲクラン)、お父さん、お母さん


ぼくはゲクランという名前のボルゾイです。

ぼくはまだ八ヶ月の子犬です。お父さんは日に3回ぐらい散歩に連れて行ってくれます。

一緒に寝ているお父さんが起きて、働きに行くとき近所を一回りします。

そしてご飯を食べて、お父さんとお母さんの机の間でお昼寝をします。ときどき引っ張りっこで遊んでもらいます。

夕方近くに買い物があるときは駅の方へ、昼間あまり相手をしてもらえなかったときは公園へ連れて行ってもらいます。

お父さんが、朝まで仕事して起きるのがすごく遅くなりそうなときとか一日中忙しかったりすると、

お母さんと一緒になので表には出ないで、中庭で遊んでもらったり屋上で日向ぼっこをします。

夕方駅の方へ散歩に行って、お父さんの買い物を待っているときとか、ベンチで休んでいるときとかにいろんな人が、ぼくを触って行きます。

とくにおばあちゃん達がやさしくしてくれます。― 触ってもいいですか。って話しかけてきて、よくなででくれます。

お父さんは―何と言う種類なのですか。とよく聞かれます。

―ボルゾイです。―ホルゾぉ〜。

―ボ・ル・ゾ・イ。―はぁ〜、ボぉルゾイ。あなたは、おとなしいわねぇ〜、で何歳なの。

―もうすぐ、八ヶ月になります。

―まあ、こんなに大きいのに! 赤ちゃんなのにやさしいお顔ねぇ。おばあちゃんは、なでなでします。

―で、なんてお呼びすればいいのかしらぁ?。―ゲクランです。

―げぇーくぅー。なでなでしている手が止まります。

―ゲ・ク・ラ・ンです。―ゲ、ゲクラン。なんだか難しいわね。どこの犬なの。

お父さんは、―うちのだ。と思いながら―ロシアの原産なんですよ。足がとても速いんですよ。

―そう、足が長くて細いですものねぇ。きれいだわぁ〜。で、どう言う意味なの。

―一四世紀のフランス人の名前です。この子の系統はドイツなんですけども。

―そう、フランスなの。どおりで気品があるわぁ〜、ノーブルねぇ。で、どういう人なの。

おばあちゃんは いっそう強くなでなでします。

それから夜十一時ごろ公園に行きます。いっぱいお友達がいて走り回ります。

つぎの日お父さん達がお寝坊していいときは、2時ごろまでサッカーやフリスビーをやってもらいます。

そんなときぼくは、足がガクガクしてしまうくらい遊び回ります。

遊んでいて居眠りしてるおじさんもいるけど お母さんやお父さんたちも楽しそうです。

ぼくはアイリッシュのジョナサンやフレンチブルのバルバとやる、枝拾い自慢遊びが一番好きです。

こないだニ日雨がつづいたつぎの日、星がきれいで、お父さんが―もうオリオンがこんなとこまで上がってる。もうずいぶん遅いよ。

―もうそんな季節なんだね。―ああ、三時だ。帰って寝なきゃ。とみんなが言いました。

ぼくはお父さんに―オリオンってなぁ〜に。って聞きました。帰り道、お父さんは星のこと、星座のことお話してくれました。

―お父さんはこれから星占いの十二星座のお話をかくのよ。お母さんが横で言いました。

―ぼくも書くぅ。星占いの十二星座ってなぁ〜に。

―それはね。ゾデアックと言ってね・・・・・・。

―ふぅ〜ん。なんで羊さんと山羊さんがでできて、ぼくたちがでてこないの。

―そうね、それを考え始めるとたいへんだよね。―お父さんたいへんなの?

―まぁ〜ね。

―ふぅ〜ん。ぼくは今夜から、いつもは走ってる夢見てるけどゾデアックの夢見て、お父さんに夢の中でお話してあげることにしました。

オリオンの三ツ星がきらきら輝いています。はやくお布団に入ってお父さんのおててをカジカジしたいなぁ〜。

 

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