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第4回 おそらく週間 No.2 ぼくの書斎

前回は書斎について祖父たちの思い出を述べた。
父方の祖父は晩年住職をしていた寺を叔父に譲り、その末寺へ隠居したので、
ぼくらも書院造りの丸い明かり窓をくぐって遊ぶこともなくなった。
父は家に仕事を持ち帰ることはめったになかったが、年に1時期だけ持ち帰ることがあった。
ちょうど今ごろの季節で分厚いファイルを数冊持ち帰り、名簿にアルファベットを記入していた。
それは学年が変わる前のなんとなくそわそわしていたり、学年末試験や入試の時期と重なっていた。
1度何をしているのか覗こうとして、向こうへ行っていなさいと叱られた。表にはBとCが並んでいた。
そして人の評価をしているのだと言った。
-でお父さんの成績は誰がつけるの-お父さんより偉い人-何処にいるの-東京-どんな人。
知ってる人-うん。
少し。父はテーブルに並べたファイルを捲りながら、
時々煙草を吸ってはため息をついたりして、楽しそうではなかった。
そのテーブルはテレビを見たり、みんなでお菓子を食べたりする一家団欒の場所だった。
ぼくたちはその間、部屋の隅でテレビを見たりゲームをやった。
というのは、
父はそこで食後の団欒やぼくらの見たいテレビや兄との一勝負をやめることを好まなかったからだ。
父はずっと官舎住まいで満足していたし、たまに読む本も母やぼくらが目に入る所を好んだ。

HPを開設したおり、強制的に"祐二の書斎"というコンテンツを入れられた。
しばらくほっとけばそのうちなくなるだろうとたかをくくっていたが、ドシエの文章が載せられた。
あまりにも長い間同じ文章が掲示され続けているので、
ついに良心の呵責に耐え切れず、前回更新した。

さて、ぼくの書斎であるが、今は工房の階下にあるブルバキショウルームの2階部分である。
10畳余りのスペースに幅80センチ3メートル余りの細長い1枚板のテーブルがあり、
椅子が数客置いてある。
これは、来客またはスタッフとの打合せに使う。そ
れから螺旋階段の横のスペースにゲクランのマットとクレート。
これは相当大きいのだけれども、
今のゲクランには狭くなったようで、もっぱら姉のシビラが使用している。
プロテックスというこれも大きいダイビング用のトランク、テニスラケット10本あまり、
釣り道具をつめた大きめのケースが数個、
これらは昨年秋に森下が宮下に部屋を明渡したときに、追い出された。
しかし宮下の部屋の長い方の二つの壁には、
森下に預けていた書棚が、まだ邪魔くさそうに残っている。
このスペースには重要な遊び道具とCD、それに暇があったら読むか、
といった本がL字に並んでいるが、そう言った理由で近づけない。
この机からかろうじて、トマス=ピンチョン『重力の虹』、『メルロ=ポンティ哲学研究』、
P=ソレルス『女たち』-逆さまになって落ちそうだ-が見てとれる。
右手には分厚い板で積み木した3段の本棚があり、1段に50冊余り並んでいる。
なんと言っても宮川淳著作集3巻が宝物だ。
ほか置くことが可能なところに最近買ったものや、
調べものに使ったもの、読みかけのものが、置いてある。
悲しいことに最近購入する本に実学ものが多くなった。
そしてnetでの購入が増えて、書店へ行くことが少なくなってしまった。
なんだか情報に偏りがでそうで、少し心配している。


 小島祐二

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2001年10月04日 13:22に投稿されたエントリーのページです。

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