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第14回 引き続き"セカチュー"と自己中にて――自己中

自己中心性とは いわゆる我侭や利己的所作などその気質をいうのではなく もう少し分析学的に
固有名詞の関係を作ろうとせず 最初から自己との分有関係の網目の中で事象を捉えようとしかしない
あるいは事象を既知の類似的範列に置こうとする性向  例えば箱庭を再現しようとしても
実際に電信柱は右にあるが自分からは左にあれば左に置いてしまう眼差し  また初めて会った人に
知人の誰かに似ている(出身地或は他の階位的共通性/血液型等身体的心身的共通性)と思う事や
その周辺ある事柄や人物についての知識に妥当性を与えてしまう性向を言っているのであり 
そこから生じる言動や行動が単に傍迷惑なものなのか 一時的に自分でも抑え難たく著しく情緒を
乱すものなのか 日常生活を営むことが困難な病的なのものか 理性/社会的道義性や政治的判断で
押さえ込めるものなのか それはその強度の問題だ
分有関係に置くにせよ類似的範列とその範疇に置くにせよ 自己との鏡像を創出する
しかし ここに立ち現れるものを真とするなら これは模造か捏造に過ぎない
普通 人はこの一方的に内在さらしめる関係のあり方を共犯関係に置かれるように感じて不快なものだし
どのように好意的に語られようとももともと侵犯を受けている方は鼻白んでしまう


もう少し言えば
このような鏡像を多く持つことは事象の審判材料として情報の量と質においてある程度有効で 
かつ知的作業ではあり またその緊張関係において絶妙なバランスを保っている
――ぼくたちはそのように日常を過ごしている――がこれは"砂の上の舗石"のようにバランスは
バランスでしかない――誰もが先刻承知なことだ
どのような知的な仮面を装っているにしても 凡そ思惟行為とかいうものはそのようなものだ 
めくるめく鏡像のこちら側に何かあるとすればそれは空洞="ゆらぎ"のようなものでしかない
そしてことある毎に更新される鏡像達のバランスは エントロピーの波にいつまでも耐えられるものでは
なし 将来の位置を正確に予測することなど不可能なことだ
出来うる事と言えばせいぜいそのバランス間の強度的変化を数量化することぐらいだ
そしてめくるめく鏡像は環境として自己を再構築していく
それを疎外と呼ぼうが また普遍性を見出そうが 個別性を見出そうが 表裏一体で分割できものではなく
普遍であれ個別であれ階位的に複数形を見出して 文化としてそのイデオロギーの正当性を主張する
まさにこの点においてサミュエル・P. ハンチントンの"文明の衝突"的論理性は否定されるべきであり
グローバリゼーションとは 15世紀の近代国家の形成期にローカルとしては成熟して衰退へと向かう
ローカルが経済=資本主義の成立をよりどころにナショナルを主張したのと同じように リージョナルが
成熟と衰退を前にしてグローバルをめくるめく鏡像を共犯関係において主張しているようなものだ


長くなった
興味のある方は
『動物化する世界の中で―全共闘以降の日本、ポストモダン以降の批評 』 集英社新書 東浩紀 笠井潔 (共著)
『自由を考える―9・11以降の現代思想』 NHKブックス 東浩紀 大澤真幸 (共著)
は対談なので読みやすくそれぞれ二人の論点がかみ合わないことが鮮明に問題性を浮き彫りにしている
ぼくは"動物化する"ということには人間中心主義的な匂いがして好きじゃない
動物化していると言うよりは かつてG・ドゥルーズが語ったように器官(オルガン)として
機械化しているとした方が正しいと思う
笠井潔と大澤真幸を比較していくもスリリングで面白いし 
二人が東浩紀に"ここんとこもう少し解ってくんないかなぁ~"的語り口が微笑ましくていい
少しそれるけれども 対談は親密であっても対置していても緊張感が漂っていてレアで楽しい
柄谷行人と寺山修の対談などはぜひ読んで欲しいものの一つだ 最近著作集が出た
また東浩紀のいうところの"動物化"という論理性の対極にあるのが 
中沢新一の"ソヴァージュ"だと思う
さらにレヴィ・ストロースまで遡るべきだと思うのだけれども 本来の趣旨とは離れすぎてしまったので
ここではジャック・デリダとレヴィ・ストロースにはこのような対立はないということに留めておきたい


2004年12月23日

小島祐二



 

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